『村の中で村を考える』(堀越久甫著)

『村の中で村を考える』(堀越久甫著、NHKブックス)

『村の中で村を考える』(堀越久甫著、NHKブックス)

古里に帰り就職したころだから、40年近く前。地域へ顔を出すようになって、そのどんよりとした雰囲気が嫌で嫌でならなかった。会合になってもはっきり意見を言わず、有力者や年長者の言いなりになっている(ように見えた)。
そんな時に出会った本。著者は農山漁村文化協会(農文協)で雑誌「現代農業」の編集長を務め、フリーになって古里・長野に帰った。そこで町内会役員などを体験した。
若かった私に目を開かせてくれたのは、「全会一致」の評価。少数意見圧殺、因習の象徴のように考えていたが、その過程での“根回し”こそ、一人ひとりの意見を尊重するムラ型民主主義の極意なのだ、という。
確かに逃げ出すことのできない地縁組織で、争いごとはご法度。変えるべきことも多いが、長年培われた知恵もたくさん詰まっている。
著者は自らを友人の評として「ムラに暮らして内側から見ることができる人は、文章が書けない。文章が書ける人は都会に住んでいるから、ムラが分からない。……その両方ができる」と紹介していた。今なら「文章が書けない」はちょっと失礼にも感じる。でも当時はそうだったのだろう。
ムラを外から見て、「封建的」「非民主的」と論じる人は多い。しかしそれは、上っ面に間違った目盛りの物差しを当てているだけに思えてならない。地域というものの見方を大きく変えてくれた本だった。
 
 
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