『ワイマールの落日 ヒトラーが登場するまで1918-1934』(加瀬俊一著)

『ワイマールの落日 ヒトラーが登場するまで1918-1934』(加瀬俊一著、文藝春秋)

近年、本がとても軽くなった。岩波新書でも2時間余りで読み流せるものがある。かつては1日かけても読み終えられなかった。字が小さく重たい言葉がぎっしり詰まっているので、咀嚼するのに時間がかかる。しかし満足感は大きかった。
この本は第二次大戦前、社会保障や男女普通選挙など、当時としては最も民主的な憲法を持ったドイツ・ワイマール共和制が、国会議事堂放火事件、全権委任法成立などを経て、わずか14年でナチス支配による第三帝国へと変貌する過程を、詳細に綴っている。
著者は、戦前に北米課長や情報部長、戦後はユーゴ大使、国連大使などを務めた外交官で、ワイマール末期にベルリン大使館勤務を経験。直接、見聞きしたことなどを雑誌に連載し、一冊にまとめた。
「ゲーテやベートーヴェンを生むほどの優秀な民族が、ヒトラーに幻惑され、ナチスに陶酔したのは何故か。一夜の夢魔として忘れ去るには、余りに代価が高すぎる」。
学術書と違い注釈などはないが、圧倒的な事実が読む人に迫ってくる。どんなに入れ物を立派にしても、中にいる国民がそのレベルに達しなければ、どうにもならないということか。初版は1976年。文庫版も出ている。
 
 
 
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