『ナニワ金融道 カネと非情の法律講座』(青木雄二監修)

『ナニワ金融道 カネと非情の法律講座』(青木雄二監修、講談社)

『ナニワ金融道 カネと非情の法律講座』(青木雄二監修、講談社)

おかげさまでこの年になるまで、お金の苦労をあまり経験せずに済んだ。それゆえ、借金に追われる人の気持ちなど、とても分からないが、想像するだけでも大変だと思う。
1990年から週刊「モーニング」に連載された漫画「ナニワ金融道」は、大阪の“マチ金”(消費者金融)を舞台に、カネにまつわるドロドロの人間模様を、アクの強い独特の筆致で描いて大人気を博した。
この本は、その一部を引用しながら、普通の人でも知っておくべき法律知識をまとめてある。「貸主より借主が強い」「100万円以下は取り立てできない」「裁判所は弱者の味方ではない」など、つい「ホント?」と思うような話が並ぶ。
監修の青木雄二氏は高校卒業後、会社員、公務員、パチンコ店員、キャバレーのボーイなどを転々とし、『ナニワ―』のヒットで「一生暮らせる金を稼いだ」と引退。55歳で結婚、一児をもうけたが、ガンを患い58歳で亡くなった。
驚かされるのは引退後、マルクスやエンゲルスに傾倒し、社会矛盾や科学的社会主義に関する本を猛烈な勢いで書き続けたことだ。亡くなった直後に出された「僕が最後に言い残したかったこと」(日経ビジネス)でも、妻や子への思いとともに、社会の仕組みを疑うことの大切さを訴えていた。
「僕が最後に―」に収録された漫画家、畑中純氏の弔辞に「青木さんの桃源郷は、どこか原始共産社会の香りが」とあった。資本主義社会の底辺からカネと欲望の世界を見続けた青木氏。たどり着いた理想社会が原始共産制だったとしたら…。これもまた示唆に富む話だと思う。
 
 
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