『国産カメラ開発物語 カメラ大国を築いた技術者たち』(小倉磐夫著)

『国産カメラ開発物語 カメラ王国を築いた技術者たち』(小倉磐夫著、朝日選書)

『国産カメラ開発物語 カメラ王国を築いた技術者たち』(小倉磐夫著、朝日選書)

ここ数年、オークションにフィルムカメラの「まとめ売り」をよく見かける。持ち主が亡くなったのか、「詳しくないので動作確認できない」と記された“ジャンク品”が多い。好事家が好む珍品ではないのものの、往年の人気機種がガラクタのように扱われているのは、かつてのカメラ少年にとって、なんとも残念でならない。
戦後、日本製品で世界を席巻したものというと、カメラ、時計、オートバイ、トランジスターラジオなどが思い浮かぶ。当時、カメラは完全な機械式。フィルム巻き上げの力で、シャッターやミラーの上げ下げを行うなど、大変な複雑、かつ精密な機械だった。
さまざまな知恵と工夫で海外に製品を送り出した数多くのメーカーは、昭和50年代ごろからの完全自動露出、電子制御、そしてオートフォーカスの出現で、次々と再編、淘汰されていく。最近は相次ぐ合従連衡で、メーカー名もよく分からなくなった。
著者は雑誌『アサヒカメラ』の「ニューフェイス診断室」にも関わった技術者。軍艦の測距儀、潜水艦の潜望鏡などで開発が始まった黎明期の光学機器から、独ライカやコンタックスのコピー品、報道カメラマンに絶大な人気を誇ったニコンFなど、カメラ大国への道のりを人間ドラマも織り込みながら、詳細にまとめた。あこがれのカメラ、レンズが次々と登場する。
1本何十円もしたフラッシュバルブを焚いて、一コマ一コマシャッターを切ったころのお話。薄暗い暗室の赤い安全電球の光や鼻をつく酢酸の臭いが思い出され、胸が少し熱くなる。
 
 
 
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